性のことを理解しないと、本当の健康は語れない!株式会社サンルイ・インターナッショナル代表・植物療法士 森田敦子さん~前編~【FJCトークルーム vol.4】

『フェムテックジャパンカレッジ』が聞き手となり、フェムテック領域で活躍する方々との対話をお届けする、対談企画『トークルーム』。

第4回目は、日本におけるフィトテラピーの先駆者であり、デリケートゾーン&パーツケアブランド『アンティームオーガニック』トータルライフケアブランド 『Waphyto(ワフィト)』などを展開する森田敦子さんをゲストに迎え、トークを展開します。

パーツごとではなく、身体全体を見ることが当たり前

アンティームオーガニック

フェムテックジャパンカレッジ(以下、FJC):森田さんはフィトテラピーの考えを基にデリケートゾーンケアブランドの先駆けである『アンティームオーガニック』を立ち上げていますが、フィトテラピーを学ぶきっかけから教えてください。

森田敦子さん(以下、森田さん):航空会社に勤務していていたのですが、その頃は『男女雇用均等法』ができたばかりで、女性が働くことが推奨されていない時代です。その時に呼吸器の疾患で入院することになり、薬が手放せない状態になったことが大きなきっかけになりました。その後、フランスにある『フランス国立パリ13大学』で植物薬理学、フィトテラピー(植物療法)を学び始めました。

日本の病院は内科や外科と分かれていることが一般的ですが、私が学んだフランスでは身体全体を見ることが当たり前という考え方でした。そのため、フィトテラピーを学ぶためには、植物のことだけではなく、ホルモンや筋肉、血、臓器、細胞がどのように作られているか、食べたものはどこで代謝されてどんな成分に切り替わって身体を作っていくのか。さらには、フランスでは性科学という領域が確立されていて、どうして性欲が湧くのか、そもそも性欲とは何か……ということまでも学びます。

FJC:日本では、現時点でも性科学は確立されていないように思いますし、フィトテラピーも少しずつ広まっている印象があります。そんな中で、日本で展開していくことはとても大変だったと想像します。

森田さん:そうですね。日本に帰国する際、大学の教授に「フィトテラピーはヨーロッパだけではなくて、日本にも和の植物があるよね。和のフィトテラピーをきちんと研究・分析をして伝えていきなさい。そして、同時に性科学ということもしっかりと伝えていきなさい」と言われました。

ただ、私が日本に帰国した当時は、エッセンシャルオイル(精油)も知られてない状況。そんな中で、フィトテラピーとその領域にあるアロマテラピー、エッセンシャルオイルを伝えていくこと、植物を身体の中に取り入れること。もちろん性科学についても伝えていくのですが、そのすべてが知られていないことだったこともあり、いろいろなことを言われました。

2008年に記者会見を行い、性科学の重要性を発信

FJC:その風向きが変わってきたと感じたのはいつ頃からですか?

森田さん:『アンティームオーガニック』を立ち上げる前に植物バイオの領域で大学院に入り、植物の機能性に関する研究をしていました。その取り組みで、2003年『日本バイオベンチャー大賞 近畿バイオインダストリー振興会議賞』(※)をいただいたのですが、そのことはきっかけのひとつになったと思います。

そこからフィトテラピーの考えに基づいた化粧品からお伝えしていこうと開発を始めまして誕生したのが、『アンティームオーガニック』です。同時に大学と組んで、フィトテラピーや植物が持つ機能性などを科学的に伝えていく。そして、性科学についても学んでいただく場として『ルボア フィトテラピースクール』の準備を進め、2008年に開校しました。

FJC:やはり、性科学は外せませんね。

森田さん:はい。性のことを理解しないと、本当の健康は語れないと考えています。2008年には「これからは性科学が大事です」と、その重要性についての記者会見を開きました。

先日、性科学の講義を行ったのですが、その時も受講者からの質疑が止まりませんでした。それくらい知らないことが多く、学びたい気持ちを持っているということだと思います。私自身も、10代から40代を経て50代になりましたが、フランスで学んだ教授たちの教えは「本当だ」と思うことが、今でもあります。性科学は本当に深いです。

FJC:フェムテックという言葉が生まれ、ひとつの産業として注目されるようになる中で、性に対する向き合い方にも少しずつ変化が生まれていると思います。どのように感じていますか?

森田さん:デリケートゾーンのケアアイテムや吸水ショーツ、腟トレグッズなど、さまざまなアイテムが誕生し、知られるようになってきたと思います。私自身もアイテムについてお話しすることはありますが、フェムテックや性科学の根本は愛です。日本では独特の文化があり、エロやアダルトという言葉で表現されることもありますが、私が学んだ教授たちは「愛だよ」と教えてくれました。

FJC:愛を具体的に言うと、どういうことになりますか?

森田さん:自分を尊ぶこと、敬うこと、調和、自尊心、他者を思いやる気持ちなども含めて、性科学を学ぶと生命力の根源だとも感じられます。もちろんその中にはサイエンスも存在するので、そのことを伝えるひとつの方法として『アンティームオーガニック』を通して、デリケートゾーンをケアすることを伝え始めました。

ブランド名のアンティームには、親密なるという意味があります。「自分と自分の身体・心とつながろうね」という意味でネーミングしました。

ケアの大切さ、必要性から伝えていく

私のからだの物語

FJC:『アンティームオーガニック』の誕生当初から、アイテムを紹介しているというより、「なぜケアしたほうがいいのか」といった、知識の部分を伝えているという印象があります。

森田さん:はい、そこは意識していました。ヨーロッパではケアすることが当たり前だったのですが、日本では「見てはいけない」「触ってはいけない」という風潮がありましたので、誕生当時は取り扱ってくださる場所がありませんでした。そもそもケアをするという概念がなかったので、当たり前ですよね。だからこそ、外陰部や陰核(クリトリス)といったパーツのことから、洗うこと、保湿することの重要性、ケア方法といった知識や情報をお伝えすることが重要でした。

関心を示してくださった百貨店で講習を行った時には、賛否両論ではなく、“賛”はほとんどなくて、“否”ばかりでした。晴れて取り扱いが決まった時も、「外陰部という言葉は使わないでください」「腟まわりもダメです」と、言えること、使える言葉がないという状況が続きました。

FJC:それでもやり続けられたのは、その先に見据えていたことがあるからですか?

森田さん:はい。当時から高齢者に向けたお仕事がしたいと思っていました。実は、日本は海外と比べ、高齢になるとおむつをはく割合が高いのが現状です。

私が学んだフランスをはじめとするヨーロッパの国々では、きちんとケアをします。だからといって、「フランスが優れている」ということではなく、日本では、女性は家事や育児を担う文化があり、参政権も与えられなかった時代があるという歴史もあるので、そういう意味で腟まわりについては伏せられていたと思います。それでも腟まわりのケアの大切さを語ってきたのは、高齢化社会を見据えていたからです。

オムツの中で排泄をすると、便には酵素があり、その働きによって腟まわりの皮膚を溶かしてしまいます。そうすると体液が出てきて痛くなります。また、排泄物のニオイは逆流して、寝ている自分自身が匂うことになります。その痛みやニオイを感じないようにするための自己防衛本能が働くことで認知症を進行させていくと言われています。ただ、今から腟まわりのケアを習慣にすることで、潤いと弾力のある膣まわりに。さらに腟周りをトレーニングすることでおむつに頼らないこともできるのです。

年を重ねることを考えて今から始める

FJC:その話を初めて聞いたのは数年前になりますが、とても驚きました。だから、VIO脱毛の必要性についても発信されていたのですね。

森田さん:はい。特にIとOラインに毛があると、排泄物が絡まり、簡単には取れません。

髪の毛で考えてもらえればわかりやすいと思います。もし髪の毛に便がくっついた場合、引っ張ったりしながら取ることになりますよね。それはアンダーヘアも同じです。ましてや高齢になると皮膚もダメージを受けやすくなりますので、引っ張ることで皮膚が破れて痛みが発生します。そうなると、先ほどもお話ししましたが痛みを感じないように認知症に近い症状になってしまうのです。早い段階で脱毛をしておくことをおすすめします。

FJC:日本におけるデリケートゾーンのケア習慣はまだ日が浅いので、シニア世代は一度も取り入れたことがない人ばかりだと思います。シニア世代に向けたこれからの取り組みについては後編でお届けします。

 

※日本の産業振興に寄与することを目的に、インパクトのある新事業を創出したバイオベンチャー企業を表彰する賞。

お知らせ:
フランス産婦⼈科専⾨医であり、『パリ第13⼤学 フィトテラピー(植物療法)学』元教授でもあるベランジェール=アルナール医学博⼠による来⽇公演を約5年ぶりに開催!

■DAY 1 Phytotherapy
2024年3⽉31⽇(⽇) 13:30〜16:00
【第1部】13:30〜14:00 ⽇本の介護現場におけるフィトテラピーの活⽤
【第2部】14:15〜16:00 ヨーロッパでの婦⼈科領域におけるフィトテラピーの活⽤

■DAY 2 Femcare & Sexology
2024年4⽉7⽇(⽇) 13:30〜16:00
【第1部】13:30〜14:00 ⽇本における性交痛外来の実際と必要なケア
【第2部】14:15〜16:00 ヨーロッパの性科学(セクソロジー)

申込み締め切り2024年3⽉24⽇(⽇)まで
https://store.womblabo.com/products/2024drberengere
※対⾯式は各⽇定員 120 名となりますので、満席となり次第、締め切りとなります。

 

No.00105

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